Appleの空間オーディオ(Special Audio)とは何なのか?また、ドルビーアトモスとの違いは?
Dolby Atmos(ドルビーアトモス)と空間オーディオの違いについて
空間オーディオのサラウンド再生部分はドルビーアトモスの技術をそのまま流用しています。AmazonがMusic Unlimitedのユーザーに提供にしているDolby Atmosの配信サービスの名を「空間オーディオ」変更したことでもわかります。
ドルビーの技術を利用しAirPods3、AirPods Pro、AirPods Max、AVアンプ等の対応機器で特定のアプリから利用し、再生する事をどうやら「空間オーディオ(Special Audio)」と呼ぶようです。
Dolby Atmosは5.1.2ch、メインスピーカー(左右)、リアスピーカー(左右)、センタースピーカー(音声)、サブフーファー(低音)、上方向からのスピーカー(左右)の合計8個のスピーカーで構成されます。
上記のように本来は複数のスピーカーを利用して立体的に音を再生する技術ですが、Dolby Atmosは「ヘッドフォンによる再現技術」を有しています。つまり、Appleはモーションセンサーを利用してヘッドトラッキングを使えるようにして、自分の動きに応じて音の聞こえる方向を擬似的に制御することで、音楽が演奏されるその場所に自分がいるように聞こえる技術を追加しました。
これらも全て統合して「空間オーディオ(Special Audio)と呼ぶようです。
Air Pods 3で空間オーディオを使い倒してみます。
空間オーディオが利用可能な特定のアプリはQuickTime、Music App、Apple TV App、FaceTime、VLC等です。
最も手っ取り早い利用方法は、QuickTimeでドルビーアトモスのトレーラを再生する事で、「空間オーディオ」を体感できます(別記事参照)。
また、Apple Music(サブスクリプション)を契約されている方は専用のコンテンツが用意されていますので、説明を聞きながら「空間オーディオ」を楽しむことが可能です。
「ステレオを空間化」とは何なんでしょう?
「空間オーディオ」に対応していないステレオ(2ch)の音を空間オーディオ(サラウンド)に変えてくれる魔法のような機能です。
一体どのような場合にこの機能が発動するのでしょうか?
手っ取り早いのはSafariです。何でもかまいませんのでYouTubeとかNetflix等で動画を再生してみましょう(違いがわかりやすいのはTV的なステレオ配信のAbema TVのコンテンツ)。
AirPodsからはどのような音が聞こえていますか?デフォルト設定では「ステレオを空間化」になっていると思います。どのような状況で再生されているかの確認と設定の変更は下記の方法で可能です。
このチェックを外すと普通にステレオで再生されるように変更されます。
AVアンプでサラウンド環境を使ったことがある方であれば「お!あれか!」と思うことでしょう。「Dolby Surround(Dolby PLII)」のような技術を利用しているのではないかと思われます。
ドルビーのHPではこのように説明されています「ドルビープロロジックII(Dolby Pro Logic II)は、従来のステレオオーディオを5.1チャンネルサラウンドサウンドに変換し、臨場感と深みのあるシームレスなリスニング経験を提供します。」
ボブズマックではこの機能を「擬似サラウンド」と呼んでいます。
この疑似サラウンド機能を利用して再生する技術をAppleは「ステレオを空間化」と呼んでいるようです。
今のところですが、特定のアプリ(Apple製のApp)でしかこの機能は利用できません(現在ではAmazonのPrime Video Appからも利用可能)。
QuickTime、Safari等でこの機能を利用できます。例えばYouTubeやNetflix、Amazon Prime Video、Abema TV等の動画をブラウザ(Safari)で再生すると「ステレオを空間化」で擬似的なサラウンドが体感可能です。
ちなみにChrome、Firefoxで同じものを再生しても、ただのステレオでしか再生されません。将来的には対応するアプリが今後増えていくのではないでしょうか。
QuickTimeで「空間オーディオ」が再生されるファイル(6ch)ではなく、普通のステレオファイル(2ch)を再生したらどのようになるか実験してみました。
意地悪にDolby Atmos対応の音源をあえて2chの音源に変えて「空間オーディオ」「ステレオを空間化」「OFFの状態」を聞き比べてみようという実験です。
早速、ファイルをFF Works(ffmpeg)で6ch(サラウンド)ファイルからステレオ(2ch)に変換します。
まずはこのファイルをFF Workにドラッグアンドドロップします。次にオーディオのEditボタンを押します。
コーデック(Codec)はACCでしたがAC3に変換します(不要かも)。次にチャンネル(Channels)からステレオを選択してデフォルト設定にある「Apple TV 4K」用ファイル書き出します。
ファイル書き出しが終わり、「情報を見る」で確認すると下記のようになりました。オーディオチャンネルが6からステレオになっているのがわかりますね。
QuickTimeで再生してみると「ステレオを空間化」が表示されています。
普通の2chのステレオファイルでもQuickTimeで再生すると「ステレオを空間化」を選択できることがわかりました。
音楽だけが入っているmp3ファイルやm4pファイルも再生してみましたが、こちらは非対応でした。
Dolby Atomsファイルを「空間オーディオ」で再生した場合とそのステレオファイルを「ステレオ空間化」で再生した場合の差が感じられない?
当たり前と言えば当たり前の話なのですが、ステレオ再生のためのヘッドフォンですから、前後左右にスピーカーが装着されている訳ではありません。
「AVアンプでサラウンド」環境の場合はスピーカーのどこから音が出ているか、フロントスピーカーがうまく使われているか、センタースピーカーがちゃんと活用されているか、サラウンドスピーカーから必要な音が出ているか等を確認すると、「擬似的サラウンド」と「リアルサラウンド」は違いはわかります。
しかし、AirPods3ではこの差が非常にわかりにくいのです(特にドルビーアトモスのトレーラ)。
何度も同じ場所をリピートして、よく聞き比べててみると低音の迫力、立体的な広がりは違う気はします。
元々、AirPods3には物理的にサラウンドのスピーカー配置なんかないですからね。”疑似サラウンドを再生するイヤホン”に”疑似サラウンドの音を流す”のだから当然といえば当然です。
ステレオ再生と空間オーディオ再生(ステレオを空間化含)の違いはなにか?
こういう言い方をすると身も蓋もないのですが、再生する音の強弱の設定の違いだと思います。Dolby Atoms事態は元々映画館で映画を大迫力で見るために開発された技術です。そのために音が分離されて情報が送られています。
上記にも書きましたが、5.1.2chを例に取ると、メインスピーカー(左右)、リアスピーカー(左右)、センタースピーカー(音声)、サブフーファー(低音)、上方向からのスピーカー(左右)の合計8個のスピーカーそれぞれに別々の音情報を持っています。この音の情報をヘッドホンで立体的により迫力のある聞こえ方をするように再生している技術だと思ってください。
Appleとしては本来はこの技術とヘッドトラッキングを合わせて自分がその空間に居るように感じ、位置に応じてサラウンド情報(分離された音源)を制御する事でヘッドホン再生でサラウンド効果をより感じることができる。それを「空間オーディオ」としています。ただ、現在ではヘッドトラッキングをOFFにする機能が追加されました。
普通のステレオ再生は本来の音源を忠実に再生します。空間オーディオは音楽すらも映画のようにライブ感のある再生をします。
M1でないMacもサラウンドとステレオを区別した再生ができるっぽい(AirPods3使用時)。
MacBook Pro 15inch(2018)のQuickTimeで再生してみました。上記のドルビーアトモスのトレーラと映画の予告編のDolby Atmosファイルをサラウンド(6ch)とステレオ(2ch)で同様に比較しました。低音の強弱と台詞、音の広がりが6ch(サラウンド)ファイルの方が迫力のあるように聞こえました。
Intel Macでもヘッドトラッキング機能を除いた空間オーディオ機能が使えるものがあるようです。
ただ「ステレオを空間化(擬似的サラウンド)」は使えないのでSafariで何を再生しても普通にステレオでしか再生されません。このあたりがM1 Macの大きな差別化になっているのではないでしょうか。
今回の空間オーディオは特殊な機材を持っていなくても多くの方が楽しめます。ユーザーが増えれば「Dolby Atoms(ドルビーアトモス)」を利用したサービスが今後どんどん増えていきそうで楽しみです。
マイナーな「AVアンプでサラウンド」ユーザーはその恩恵が少しでもあればいいなと今後も楽しんで色々レビューしたいと思います。
※あくまで個人の耳での感想です。このページは今後、情報の追加等により加筆修正をしていきますので、ご了承ください。また、耳というアナログで感覚的な評価ですので間違えがあれば修正をしていきます。